防犯改修のポイント&対策!防犯対策をどう考えますか?
防犯に配慮した改修を行うには1〜4の基本原則を押えておく必要がある。
1は周囲からの見通しの確保、
2は居住者の帰属意識の向上、コミュニティ形成の促進を図るといった意味合い。「領域」=「なわばり」のことで、来訪者にとって居住者のなわばりを感じる場所を強める行為を指す。具体的には扉の設置等物理的な領域の明示に加え、外観の状態や生活行動で心理的な領域を知覚させ、居住者の帰属意識の向上、コミュニティ形成を促進させる点まで含む。
3は侵入者の動きを限定させ、住戸等への接近を防げるという意味。
4は侵入が困難な部材や装置の使用で、被害を免れたり、被害を最小限にとどめることをいう。
■ポイント
各表に示した対策は、上図で挙げた基本原則4項目がベースになっている。「見通しの確保」がずらりと並ぶが、これは「監視性の確保」を狙っている。既存マンションの場合、新築と異なり「設計を工夫する」わけにはいかず大規模修繕の際、大掛かりなレイアウト変更を行うか、「防犯カメラ」等で見通しの悪さを補完することになる。「鏡」の使用も、監視性の強化・確保につながる。防犯カメラは監視性を強化し、犯意の抑制も企図している。「設計指針」では、出入口・メールコーナー、エレベーターホール等見通しの確保が困難な部位での防犯カメラ設置を推奨している。また「照度」つまり明るさを確保することも重要。「50ルクス以上」とは「人の顔、行動が明確に識別できる程度以上の照度」、10m先の人の顔、行動が明確に識別でき、誰なのかはっきり分かる以上の照度を指す。「20ルクス以上」は同様に、10m先の人の顔、行動が分かる程度、「3ルクス以上」は、4m先の人の挙動、姿勢等が識別できる程度以上の照度を指す。ちなみに「10m先」というのは、犯罪者の6割が夜間照明で10m先から自分の顔が分かると「気になる」と答えた調査結果に基づいており効果的と思われる。ただ、明るすぎても住民からクレームが出る恐れがあり、案外難しい対策ともいえる。
また、こうした対策は「犯意の抑制」や「犯行の回避」を狙うものだが、「万全」というわけにはいかない。ただし「マンション単位で防犯に配慮している」というアピールを行うのは有効であり、結果的に犯行を減少させる方策になるといえる。
防犯対策の考え方
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自転車・バイク置場
- 対策
- 見通しの確保
盗難防止措置
照度の確保
道路や玄関、居室の窓等からの見通しの確保に加え、外部から侵入しやすい場合は門扉の設置を提案。盗難防止措置はチェーン用バーラック、サイクルラックの設置等を指す。照度は3ルクス以上。
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駐車場
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
おおむね自転車、バイク置場と同様の対策を求めている。門扉に加え、シャッターの設備も提案。照度は屋内の場合20ルクス、屋外は3ルクス以上。屋内の場合、壁面の明るい色の塗装も有効。
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通路
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
「通路」は団地内道路以外の通路を指す。植栽や塀、柵・垣等で見通しが妨げられている場合、改修による見通し確保を求める。照度は路面3ルクス以上。
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屋上
- 対策
- 施錠可能な扉の設置
バルコニー等への侵入阻止
屋上に通じる共用階段の出入口への扉の設置。扉は内外を見通せる構造のものが望ましい。扉に錠を設置する場合、非常時に自動的に開錠できる装置の設置。屋上を経路としてバルコニーに侵入される恐れがある場合、面格子・柵設置。
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児童遊園等
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
塀や柵等の設置
照度は地面で3ルクス以上。塀や柵・垣等の構造・高さは周囲からの死角の原因、住戸の窓やバルコニー等への侵入の足場にならないように気をつける。
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エレベーター
- 対策
- 防犯カメラ導入
鏡の設置
窓の設置
照度の確保
鏡は扉の反対側で、顔の見える高さへの設置が望ましい。照度は50ルクス以上で、壁面を明るい色に塗装するのも効果的。他、連絡・警報装置の設置。
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共用廊下・階段
- 対策
- 見通しの確保
バルコニーへの侵入阻止
照度の確保
バルコニーへの侵入阻止としては、共用階段手すり上部への面格子設置など、必要な個所での面格子、柵の設置。屋内共用階段は、強制わいせつ等の機会減少策として階段室の共用廊下等常時開放。照度は20ルクス以上。
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共用出入口
- 対策
- 見通しの確保
オートロックの導入
照度の確保
植栽や工作物が傷害になり玄関の見通しが妨げられている場合は、改修するか適切な場所に移設する。玄関扉はガラス入扉が望ましく、特に住棟内への侵入を抑制する必要性が高い場合、オートロックシステムの導入が望ましい。玄関の内側の照明は床面で50ルクス以上の平均水平面照度を確保、外側は20ルクス以上。
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鍵・電子錠
- 対策
- 玄関ドアへの電子錠設置
エントランスへの電子錠の設置
携帯電話やカードキーを使って開ける最新の電子錠。共同エントランスや玄関ドアへ電子錠を設置するだけで空き巣や不審者侵入の抑止効果が高い。
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メールコーナー
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
メールコーナー、宅配BOXは、玄関やエレベーターホール、管理室からの見通しが確保されているのが望ましい。照度は50ルクス以上。極端な明暗が生じないよう配慮する。各メールボックスは施錠装置を装備するか、カギの設置が可能なタイプに。
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エレベーターホール
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
玄関、事務室からの見通しを確保。構造上支障がない場合は改修による見通し確保を。1階部分での照度は50ルクス以上、その他フロアでは20ルクス以上の照度確保。
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居室・玄関ドア
- 対策
- 見通しの確保
照度の確保
モニター付インターホンの設置
人が隠れるスペースをなくし、照度50ルクス以上。来訪者の確認や玄関ドア前の状況を確認できる「テレビ付インターフォン」の設置。玄関ポーチを設けると、玄関ドアを開けてしまっても、目の前に来訪者が立っていることはないので有効。
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管理事務室
- 対策
- 見通しの確保
許容玄関、メールボックス、エレベーターホールを事務室の窓や扉の小窓から見通せる構造に。玄関付近では、強制わいせつ、メールボックスは窃盗等の犯罪が起きる危険性がある。屋外に面した窓は、侵入防止に有効な措置を講じる。
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その他
- 対策
- 上階への足掛かりへの配慮
「その他」ではゴミ置場、集会所等が上げられる。配管、雨どい、外壁等に対し「上階への足掛かりにならないよう」配慮が必要。
資料 |
・セキュリティ賃貸資料 ・「防犯モデルマンション審査基準」と対応例 |
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